伊丹十三が、まだ伊丹一三(いちぞう)であった頃に書いた文章に、
「日本の家庭が毎朝、カツオブシを削るように、ヨーロッパの家庭はコーヒーの豆を挽くのだ」
というのがあった気がします(あやふやな記憶ですが……)。
現代の我々から見れば、「何をヤミクモに憧れてんだか……実際は、オーベイたって、大したこたぁねぇよ」テキ60年代欧米讃歌オンパレードな内容なのですが、確かに、わたしが子供の頃は、二日に一度は、祖母が削り器を使って、カツオブシを削っていました。
カツオブシ削り器……
ご存じの方も少なくなっているのでしょうか?
形はカンナを逆さまにしたような道具で、下に削ったカツオ節をいれる箱があって、その上に逆カンナをおいて、カツオ節を前後させて削るのです。
今でいえば――キュウリなどをスライスするアレのような感じですね。
なかなか調整の難しい装置で、祖母が金槌を使って刃の出し入れをしていたのを、子供心に「スゴク(危ない)マシンだぜ」と感心して見ていた覚えたあります。
さて、ここからが本題です。
長らく、我が家の冷凍庫には、以前に築地で購(あがな)った本カツオブシが転がっていました。
購入した当初こそ、カツオブシ削り器を使って毎日食べようと思ったのですが、昔の削り器はすでに手元にはなく、手入れも大変そうだったので、ホームセンターでアルミダイキャストの替え刃交換式のミニカンナを購入し、代用しました。
しかし、これは疲れる、その上危ない。
いつの間にか使わなくなり、カツオブシも冷凍庫で冬眠に入ることになってしまいました。
それでも、いつも心の隅にはひっかかっていました。
あのカツオをなんとかしなければ……
去年の大掃除で、再びカツオ節を見つけてしまったので、仕方な――いや一念発起、何かよい道具はないかと探したところ、あったのです。
前に探した時は見つからなかったのに……りっぱな手動式カツオブシ削り器発見。
その名も「オカカ七号」!
七号というからには一~六号もあるはず。
とサイトを見ると↓1970年に一号が発売されています。知らなかったなぁ。
http://www.aikogyo.co.jp/seihin/page/okaka.html
さっそく購入し、試してみました。
まず、外観ですが、氷かき器のような形をしています。
構造もほぼ氷かきと同じです。
カツオブシをナナメに差し込み、軽く手で押さえながら、くるくる(抵抗はほとんどありません)まわすだけ。
ほら、このとおり、綺麗なカツオ削りができました。
原理は、回転板に形状の違う三枚の刃がついていて、一回転で、三度かつおを削るというものです。
もっとも。わたしのカツオブシは、冷凍睡眠期間が「エイリアン2のリプリー並に長かった」ためか、乾燥しすぎて割れてしまいました。
改めて説明書を読むと、「乾燥して割れる場合は濡れフキンでつつんでしばらくおくとよい」とあったので、残りのカツオ節を、濡らしたペーパ-タオル共にタッパーにいれ、一昼夜おくと見事にきれいに削りきることができました。
実際に食べてみると香りが違う。まったく違う。
これまでパックに入ってたアレはなんだったのか、という感じです。
いままでどおり、出汁をとっても、根本的な味がちがいます。
うちの猫の騒ぎようも尋常ではありません。
調子にのって、すぐに近くのスーパーでカツオブシを買ってきました。
これで、気が向いた時に、削りたての花かつおを食べることが出来ます。
6,000円程度で手に入るホンモノノ味。
わたしは気に入りました。
いくつかのサイトで目にした製品のマイナス評価に「大きすぎる」「力が必要」とありましたが、氷かきと比較すれば、それほど「大きく」も「力が必要」とも感じませんでした。
だいたい、製品の性質からいって、削り溜めするものではなく、必要な時にさっと出して、削りたてを食べるものですから疲れることもないのです。
おまけ
最近、ある本を読んでいて、家庭であまっているスルメイカを削るといろいろな料理に使えて便利、とあったので、オカカ七号で削ってみました。
スルメを縦に切って↓
縦にまとめてカツオ節のようにオカカ七号に差し込み、
いつも通りにくるくる回すと、
みごとに、スルメ削りができました。
これでお好み焼きをつくると美味しいこと。
ぜひ、おためしください。