このたび、遅ればせながら「電子辞書」を購入しました。
ドイツ語や中国語の入ったものにしようかとも思いましたが、価格が四万円近くするのでやめました。
そんなに高いなら紙の辞書を使います。
ペーパーバックや英語の本を読む時には、辞書をひかずに、前後の文脈で判断しているので、オックスフォード系のドデカい専門英語辞書もいりませんから、結局型落ちのカシオ製一般向け辞書を買うことにしました。
選んだ理由は、バッテリーが充電式でなく単四式だったのと、値段が一万数千円と新型の半額だったからです。
で、今さら電子辞書を買った理由ですが、今回の撮影旅行で、自分の「一般的単語力不足」を痛感したからです。
非常識~シリーズで著名な神田氏の名言に「英会話でもっとも難しいのは一般会話だ」というものがります。
つまり、裏を返せば「専門知識なら意思疎通はカンタンである」ということです。
わたしも、コンピュータやソフトについて、あるいはモノの売買については、会話でもe-mailでも比較的容易に意思疎通ができます。
しかし、今回の撮影旅行で、味噌や醤油の製造に欠かせない「麹」を説明できなかった。
皆さん、麹(こうじ)の英語名って知ってます?
malted rice あるいは aspergillus なんですね。
モルトですよ、いや、モルツの方が分かりやすいかな。ビールの。
醤油の製造元では、恥ずかしながら分からなかったので、enzymeを使ってしまいました。
a kind of enzyme って。
でも、考えてみると、エンザイムって麹ではなく、酵素なんですね。コエンザイムみたいな。
こんな時に、紙媒体でなく電子辞書なら、咄嗟(とっさ)に調べることができる。
そのための購入です。
あと、奈良市内の有名店「中谷堂」の餅を食べさせた時に、よもぎ餅を説明できなかった。
まず、ヨモギ(蓬)。
a kind of Japanese origin herb……じゃおかしいし。
ちなみに、この a kind of は、知らない単語を他の言葉で言い換える万能薬です。
答えは mugwort です。
これをライスケーキに練り込んで、餡を包んだもの……え、餡ってどういうの?
皆さん、ご存じですか?
よし、a kind of……こればっかりもなぁ。
で、調べてみると 餡 = bean jam
豆のじゃむぅ!そりゃそうだろうけどさ。
まあ、本人は、目の前で展開される、例の驚速「マッハつき」(三人の男で目にもとまらない速さでつき、返しを繰り返す)の業に夢中で、わたしの説明など聞いていませんでしたが……
あと、卓袱(しっぽく)料理に出てきた海の幸の説明も難しかったなぁ。
まず、ウニってのが出てこなかった。皆さん、知ってますか?
sea urchin ですぜ。
あと、タイ、カツオ、マグロは分かりますが、サワラが分からなかった。
サワラ = 鰆だから、スプリング・フィッシュ?なわけがない。
spanish mackerel なんですね。
そうそう「マカレル」=サバですわ。
「サワラ」って「スペインサバ」なんだなぁ。
日本の朝食につく「海苔」が、a sheet of laver より、ノリペーパーのほうが通りがよいのは東海林さだお氏のエッセイで知っていましたし、
「かつお節けずり」は dried bonito shavings で、決してshaving dried bonito ではないことは、伊丹一三(後の十三)氏のエッセイで知っていました。
後者は、ガイジンにとって、床屋の椅子に座ってひげ剃りクリームを塗られているカツオをイメージするらしいですね。
しかし、結局、これらの努力も辞書もあまり訳にはたちませんでした。
英語を第三言語にしているようなヨーロッパ人に、そんなムツカシイ英語を言っても通じないのです。
昔から英語文化圏の人間と話をする時によく感じたことですが、一対一対応の使用頻度の少ない単語でモノを説明するより、それこそ、a kind ofで汎用的に類似説明した方が、一般的教養の外国人には、よく通じる気がします。
これは、日本における、ちょっとした会話で、世界史の著名人や日本史上のデキゴトを引き合いに出したときに場の空気が止まってしまう、そんな場の空気読めない発言をした後の感じに似ていますね。
専門分野での会話はまた別です。
そちらでは、話が弾みこそすれ停滞はありません。
今回は、専門外のことに手を染めたがユエの苦労だったのかもしれません。
しかしながら、良い勉強にはなりました。
ちなみに、「きなこ」って英語で何というか知ってますか?
きな粉餅の……
答えは、soybean flour でした。