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美しい文字 それは幻ではない! パイロット「色彩雫」

ああ、嗚呼、なんということでしょう。

 いきなり一目惚れしてしまいました。

 もうこれは恋ですよ。コイ。カープ。

 好きになったのは、その名も山葡萄(やまぶどう)。

 濃い紫色で、乾くと、光沢すら感じさせる黒色になります。

 え、何の話かって?

 パイロットから発売された、日本の美意識から生み出された、万年筆のインクの話です。

ファイル 585-1.jpg

 始めに断っておかねばなりません。

 わたしは、万年筆は好きですが、多くの適当な万年筆についてくる「ブルーブラック」インクという色が、子供の頃から好きではありませんでした。

 なんだか、青っぽく黒い、どっちつかずな色に欺瞞(ギマン)を感じていたのですね。

 大人になってもそれは変わりません。

 どうせ使うならインクは黒です。

 銘柄は、深みのある漆黒さが好きで、長らくモンブランの黒を使っていました。

 赤は別になんでもいいので、値段の安いパーカーを使っていました。

 最近になって、黒は、セーラーの超微粒子漆黒インク「極黒」(キワグロ)を使いはじめましたが、あれはいい。

 ともかく、黒い上にも黒い。

 ほら、よく、冠婚葬祭なんかで、男連中が並んだ時、その礼服の値段によって、同じ黒でも、まるで黒さが違うことが明確になるでしょう?

 オレのよりヤツのほうが黒い!とかね。

 もちろん、わたしのは誰よりも薄い黒です。

 礼服なんてそれでいいのですよ。

 しかし、インクが、それではいけない。

 記録媒体として文字を紙に残すわけですから、クッキリと明快な色の方が良いのです。

 長らくそう思っていました。

 山葡萄(ヤマブドウ)を試し書きするまでは……

 最近でこそ怪しくなってきましたが、かつて、日本には24の季節がありました。

 色も同様。

 日本の自然(動植物)に根ざした、さまざまな色が生み出され、表現されてきました。

 それが、いつのまにか、ブルーブラックだのレッドだのアンバーだのといった、木で鼻をククったような(ってどんな意味?)色ばかりがハバをきかせるようになってしまった。

 しかし、今こそ、日本の美しい夜、ではなくて、美しく微妙に綾(あや)のある色の復権がなされるべき時なのです。

 万年筆を持つ楽しみのひとつは、書き味が最高なのはもちろんとして、さまざまなインクを使えるということです。

 いやぁ、長生きはするもんですよ。

 生きている間に、こんな様々な日本に根ざした色のインクを使えるようになるとは、ホント、思いませんでしたよ(ちょっとゲサ?)。

http://www.pilot.co.jp/products/pen/fountain/iroshizuku/

 上のサイトには見本がならんでいますが、ホンモノはディスプレイで見るような、単純な色ではありません。

 ぜひ、店頭で、実際に書いてみてください。

 美しい文字、それは幻ではない!

 たとえ字は下手でもね。

 そして、インクの色の深さに感動したら、この際、キャップレスでも何でもいいから、日本製の万年筆とコンバーター(これがないと、インクツボインクが使えない)を購入し、万年筆仲間になってください。

 是非とも。

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