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彼がアメリカ人を辞めた日 ~スーパーマン、米国籍を捨てる~

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 最初に、クイズです。

「ウルトラマンは宇宙人?」

「はい」

「そう、宇宙人ですね。では、スペクトルマンは?」

「宇宙人のサイボーグ!」

「そうそう、ではスパイダーマンは?」

「地球人のニューヨーカー」

「正解!バットマンは?」

「地球人でゴッサム市民」

「では、スーパーマンは?」

「えーと、若い頃からヤングスーパーマンとして地球にいたけど、もともとは……確か惑星クリプトンで生まれて、すぐにロケットで地球にやってきた……宇宙人?」

「そのとおり!」

 そうなんですね。姿こそ地球人に似ていますが、彼は、(黄色)太陽エネルギーによって超人化する、紛れもない宇宙人なんです。

 
 同様に、日本のコミック「バビル二世」も宇宙人です。
 
 横山光輝氏によって描かれたバビル二世は、はるか祖先が宇宙からやって来た超宇宙人で、主人公の光一は、その血を受け継ぐ日本の学生でした。

 日本生まれの日本育ちで、自分が宇宙人の子孫だなんて、まるで知らなかった彼は、精神構造が限りなく地球生まれの日本人に近い宇宙人です。

 しかし、宇宙人は宇宙人。異形、異質の存在です。

 そのため、現在連載されている続バビル二世(ヤングチャンピオン連載:バビル二世 リターナー)は、アメリカが彼を異星人の侵略者として敵視する設定になっています。

 まあ、それには理由があって、ひとつには新たな異星人とのコンタクトによるものであり、またひとつには、かつてバビル二世を騙し、自国軍隊の戦闘力増強の為に、彼の血によって生み出した「アメリカ製疑似超人」を、自分の能力を「悪用」されることを恐れたバビル二世によって殺された恨みであったりするわけですが……

 ともかく、アメリカがどう考えようと、容姿も含め基本的にバビル二世は「日本で生まれた」日本人と考えて間違いありません。

 しかし、スーパーマンは、地球外惑星で生まれて、後にロケットで、アメリカの片田舎スモールビルにやってきた『移民』なんですね。

 アメリカ生まれじゃない。

 だから、いかにスーパーマンが望んでも、彼は『アメリカの大統領にはなれない』のです。

 キッシンジャーのようにね。

 そういえば、つい最近も、オバマ大統領に、『アメリカ生まれではない』疑惑が浮上していましたね。

 どうも、彼の出生証明書がアヤフヤなものだというのです。

 もし彼がアメリカ生まれでないなら大変です。

「アメリカで生まれた者しか合衆国大統領にはなれない」のですから。

 野心家だったキッシンジャーはそれで涙を飲んだのです。
 ニクソンのような男が大統領になれるのに、とね。

http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPJAPAN-20859520110428

 いや、これは余談でした。

 いいたかったのは、スーパーマンは、移民の国アメリカのヒーローにふさわしく移民のコドモであった、これです。

 では、もうひとつ質問です(これは以前にこのブログでも書いたことがあります)。

「ウルトラマンが守るのは?」
「緑の地球です」

「キャプテン・フューチャーが守るのは?」
「太陽系です」

「スパイダーマンが守るのは?」
「ニューヨークとMJです」

「バットマンが守るのは?」
「ゴッサム・シティです」

「では、スーパーマンが守るのは?」
「アメリカ……かな」

「残念!原語(テレビ版オープニング・ナレーション)にはこうあります。The never ending battle for truth, justice, and the American way.」

「つまり?」

「つまり、真実と正義と『アメリカン・ウェイ』を守るために闘うのです」

 とまあ、これは、スーパーマンが登場した1938年、あるいはジョージ・リーブス演じるテレビシリーズが流行った1950年代後半なら通用したでしょう。

 しかし、いまや21世紀、当時とは価値観も大きく変わって来ています。

 そして、ついに、先月末(2011年4月)に発売されたAction Comicsで、スーパーマンは、アメリカ国籍を捨てる決意をするのです。

 内容はこちらを読んでいいただければわかると思いますが、↓

  『スーパーマン「私は米政府の手先じゃない」 国籍捨てる』
  http://www.asahi.com/international/update/0501/TKY201105010156.html

 要は、「もうアメリカン・ウェイを守りたくない」ということですね。

 わたしは、この「事件」が、ウサマ・ビン・ラディン殺害の少し前に起こっていることに、何か不思議な因縁を感じます。

 あるいは彼も、無関係なヨソの国(パキスタン)にまで、武装した集団で出かけていって、拘束するオプションも考えず(のようにみえます)、軍隊でなく個人を射殺するアメリカン・ウェイに愛想を尽かしたのかも知れません。

 記事にもあるように、このスーパーーマンの行為に対して、アメリカでは賛否が別れているようです。

 反対派の意見は面白くありませんが、賛成派の「米国だけに納まる器ではない」という意見には笑ってしまいます。