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シンクロでも使える? ~ノーズ・マスク~

1970年、大阪万博にやって来たアメリカ人が、街ゆく日本人の多くが、マスクをしているのを見て驚いた。

 彼は、医療関係者以外、街中でマスクをする米人を見たことがなかったのだ。

 同行の日本人に理由を聞けば「風邪の予防だ」という。

 彼は、日本人の用心深さに感銘を受けて本国に帰っていった。

 そして、自分の会社で、日本人向けの商品を作り、日本に向けて売り始めた。

 さて、それはなんでしょう?

 いや、そんなクイズをするのが、この項の本題ではありません。

 答えは「がん保険」です。彼は当時のアフラックの社長だった。

 マスクをしているのをみて「がん保険」を思いつくというのは、すごいセンスというか、こじつけっぽいとはおもうが、確かに、わたしも、ハリウッド映画やテレビドラマで、医療関係者以外の米国人がマスクをしているのを見たことはない気がする。

 そういえば、戦前には黒いカラス天狗みたいなマスクもあった。

 おそらくは、「結核に対する恐怖」が根強く日本人に染みついているからだとは思うが、日本人はマスクが好きだ。

 特に、最近は、冬になるたびに「新型インフルエンザ」の恐怖をマスコミからすり込まれ、やれ「H5N6」だの「亜種」だの「パンデミック」だのと脅かされて、人々はますますマスクを身に付けるようになって来ている。

 最近の主流は、不織布を利用した「使い切りのマスク」だ。厚生労働省も、その着用を勧めている。

 実際に、そういった廉価なマスクがウイルスを完全に防ぐことはないそうだが、それでも咽頭の保湿や雑菌の遮断という点でかなり有効だというデータもある。

 それは良いことだろう。

 が、そこにはひとつ問題がある。

 変な意味にとられると不本意なのだが、わたしは、女性の顔を見るのが好きなので、マスクで顔が隠れているのは困るのだ。

 美醜にかかわらず(まあ美しいにこしたことはないが)、女性がくるくると表情を変えて話をする、その姿を遠目にでも見ながら、街を歩き、喫茶店から街を眺めるのが好きだ。

 思えば、それがわたしの気分転換なのだろう。

 仕事柄、あまり人混みに出ることはないが、たまに外に出た時に、街行く女性の多くがマスクをしていると、なんだかがっかりする。

 ああ、男性はマスクでもサングラスでもしていてください。どうぞご勝手に。

 それに、現行のマスクは、どうもデザインが良ろしくない。

 かといって、花柄のマスク(子供用に最近売られている)は、あまり好みではないし…… 

 と、思っていたら、先日、新聞の広告でおもしろいものを見つけた。



 鼻の穴につめてつかう「鼻マスク」だ。

 ティッシュや綿で鼻をふさぐのとは違い、ちゃんと呼吸ができるそうだ。

 確かに、これをつけて口を閉じ、鼻からだけ息をしていたら、マスクと変わりないかもしれない。

 シンクロみたいに変に鼻が変形しないのもいい。
 
 調べてみると、結構ふつうに売られているようだ。

 しかし、つけ心地や、使い勝手はどうなのだろう。

 大きさは汎用とあるが、経験からいっても、人の鼻の穴の大きさは、かなり個人差があるような気がする(我々とジャッキー・チェンの鼻の穴の大きさが、同じとは思えない)。

 だれか、この鼻マスクを使った人はいないだろうか?

 もし良ければ、コメントで使用感などを教えてほしい。

腫瘍マーカーp53抗体

 皆さんも「腫瘍マーカー」という言葉をご存じでしょう。

 ご存じのように、ヒトの体は細胞でできています。

 その数多い細胞は、体中を流れる血液から栄養を与えられ、老廃物を持ち去られています。

 ですから、細胞に異変があれば血液に変化が現れる。

 ふつうは、血液の構成物質を調べれば異変がわかるのですが、先に紹介したPET検査は、栄養の流れを調べて、悪性腫瘍つまりガンを発見しようという「逆転の発想」の検査方法でした。

 腫瘍マーカーは、血液の組成を調べて体内の異常を発見するという、ごくオーソドックスなガンの検査方法です。

 ターゲットにするのは「血液中のタンパク質」です。

 ガン細胞は、一般的なタンパクのほかに、健康的な人体にはあまり存在しない特異的なタンパクをもっていることがあります。

 腫瘍マーカーはこの特異的なタンパクを調べる血液検査で、CEA、BFP、TPA、IAPなど、数多くの種類が発見されていて、診断の補助や術後の経過観察に有効な手段になっています。

 この辺は、ネットで検索されてもすぐに一覧が表示されると思いますので興味があればお調べください。

 マーカーには「特定の臓器」のガン細胞に陽性を示すものと、臓器に対する特異性が低いものがあります。

 腫瘍マーカーには、ガンが「ある程度の大きさになるまで陽性を示さない」という性質があり、陰性であるからといってガンを否定できるものではなく、他の要因によって陽性を示すこともありました。

 このあたりもPET検査に似たところがありますね。

 「不正確さ」と「進行したものでないと判断できない発見の遅さ」が腫瘍マーカーの欠点なのですが、最近、「食道ガン」「大腸ガン」「乳ガン」に対して保険が適用されるようになった「p53抗体」という新しい腫瘍マーカーが注目されています。

 別項でふれた「ガン抑制遺伝子」として知られる「p53遺伝子」が作り出すp53タンパク質は、DNAに傷を受けた細胞の増殖を止め、DNAの修復を促進したり、修復不可能な細胞を自殺させたりするなどの働きをします。

 もし、p53遺伝子が「突然変異」を起こしp53遺伝子タンパク質の機能がなくなると、さまざまなガンが発生するようになります。

 p53遺伝子は、変異すると「自己抗体」を作ります。

 つまり、

「p53遺伝子が変異しているとガン細胞が発生しやすい」→

「p53遺伝子が変異すると自己抗体が生み出される」→

「血液中に、p53抗体があれば、ガンの可能性が高い」

 ということになります。

 p53抗体検査は血液1ミリリットル程度で検査できます。

 今までの腫瘍マーカーは、上記のように「増殖するガン細胞が作り出すタンパク質」や「分泌されるホルモン」などの物質を調べてきました。

 そのため、「ガン細胞があまり増殖していない初期の段階」では精度が落ちることがあります。

 しかし、ガン細胞自身が作り出すタンパク質ではなく、ガン細胞を抑制する遺伝子の変異によって作り出される抗体ならば、かなり早い時期に血液組成に現れるのです。

 つまり、p53抗体の特徴は「早期ガンの検出率が比較的高く」、腫瘍マーカーと組み合わせて検査すると検出率があがるということです。

 また、治療経過の観察や再発、転移の指標としても有効です。

 もちろん、p53抗体検査は万能ではありません。

 検査を行っても、初期ガンがすべて発見されるわけではありません。

 陰性の場合でも100%ガンを否定することはできませんし、p53抗体検査だけで、ガンの種類がわかるわけではありません。

 これまで通り、様々な検査を組み合わせて総合的に判断する必要があります。

 それでも、以前よりはるかに早くガンの兆しを知ることができる点で、かなり有効な検査方法だといえるのです。

ペットじゃないよPETだよ

 生前、父は珍しいタイプのガンになったため、それが本当にガンであるかどうかを調べるためにPET検査を受けました。

 PET検査(陽電子放射断層撮影)をご存じでしょうか?

 これは、原理としては単純ながら面白い検査方法です。

 前に、このコーナーで書きましたが、ガン細胞とは「死なない細胞」です。

 そして、猛烈な勢いで増殖をするために多くのエネルギーを必要とします。

 そのため、最近の研究では、ガン細胞が近くの血管から栄養をとるため、毛細血管を引っ張ってくることが分かっています。

 ならば、その性質を利用して、即時エネルギー物質であるブドウ糖を血管から注入して観察、ブドウ糖が急激に集められる場所にガンがあると考えられるのではないか?

 そう考えて実用化されたのがPET(ペット)検査です。

 実際には、ブドウ糖に放射性物質を化合させた薬剤を注射し、体から出てくる放射線を検出します。

 そうすることで、ガンの有無がわかるというわけです。

 PET検査以外には、CT(コンピュータ断層撮影)やMRI(磁気共鳴画像化装置)などもよく使われますが、これらは、病巣の形を見てガンの有無や状態を判断する装置です。

 しかし、PETは、ガン細胞がブドウ糖を必要とするという、ガン細胞自身の行為をもとに、ガンの有無を直接知ることのできる検査方法なのです。

 分かりやすい原理と、機械さえあれば比較的容易な検査の上、患者に負担を与えないということで、一時期ひそかなブームとなったPET検査ですが、欠点もあります。

 それはガン病巣があっても見つからないことが多いということです。

 胃、腎臓、膀胱、肝臓、胆道、前立腺など、多くのガンでは、ガンの病巣が存在してもPET検査だけでは見つけにくいのです。

 つまり、検査結果が「陰性」でもガンの可能性がある。

 そんな検査、何の役にも立たないのでは?と思いますが、そうではありません。

 一度、他の検査を併用して「ガン病巣がある」ということが分かると、PETは俄然有効になってきます。

 腫瘍の悪性・良性の判断、治療による効果の判定、治療後の再発の有無や転移評価など、さまざまな用途にPETは使えます。

 しかしながら、上で書いたように病巣の判定が不確かであるという理由で、欧米でPET検査はほとんど行われていません。

 さいわい、日本では、かなり普及していますので、ガンと診断されたら一度PET検査をうけることをオススメします。

 大まかな料金は、父の検査の時には、ガンが見つからなければ保険適用なしで検査費用10万円以上、見つかれば数万円程度でしたが、今はもっと値下がっているでしょう。

 実際に悪い結果が出れば支払う料金が安くなるのは、胃ガンの原因といわれているピロリ菌検査と似ていますね。

 つまり、金銭面からいっても、明らかにガンと分かってからPET検査をしたほうが有効なのです。

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