宮川 泰が亡くなった。享年七十五歳。
仕事ぶりはともかく、テレビであるいは舞台で彼がみせる横顔は、真面目さを表にださない、陽気でおふざけばかりのエピュキリアン的人物像だった。
何年か前に、仕事がらみで彼のコンサート(彼はメインではなく、コメントをしたり、ふざけてピアノを弾いたりという、どちらかというと狂言回し的な役だった)に行ったことがある。
その時、機会はあったのに、楽屋に行って挨拶をしなかった。
共演者が好きではなかったからだが、なぜ、あのとき会っておかなかったかと、今、後悔している。
別に、一度だけ会ったところで、何かが変わる訳ではないのだが。
わたしは、彼の曲は、歌謡曲もアニメの曲も好きだった。
「交響曲 宇宙戦艦ヤマト」のレコードも持っている。
これは、おそらく、後に続くガンダムや銀河鉄道などのアニメ交響曲の魁(さきがけ)とも言えるものだろう。
昔からこれが好きでよく聞いていたのだが、音楽の仕事を始めた時、スタッフにこれを聞かせたところ(半分自慢でね)、
「なにこれ!編成が少なすぎる。十五人ぐらいで演奏してるんじゃないの。だいたい、小学校の演奏会じゃあるまいし、木琴を使うなんて……」
まっぷたつにされてしまった。
なるほど、あらためて聞いてみると、確かにストリングスの厚みが少ない。
木琴は学芸会的で、後のワルシャワ交響楽団演奏による「ジャイアント・ロボ」とはえらい違いだ。
だが、仕方がなかったのだ。
たかだか「アニメーション」の曲を、交響楽にして演奏するなどという行為は、当時は考えられなかった。
企画自体は、多分に目立ちたがり屋だった某N崎プロデューサーの発案だとは思うが、企画を受けて、シンフォニースタイルの編曲を打診された宮川氏が、二つ返事で引き受けたことが、当時のライナーノーツに記されている。
彼が快く引き受け、かつ良い作品(予算の関係による員数不足はさておき)を作ったからこそ、その後のハメルンの笛吹に続くネズミのごとき後発交響楽が多数生まれたのだ。
その意味で、アニメファンは彼に感謝せねばならない。
なにより彼が素晴らしかったのは、「宇宙戦艦ヤマト」というアニメの作曲者であることを、ずっと誇りにしていたことだ。
そして、機会があるたびに、テレビで舞台で冗談交じりにピアノであのメロディーを弾いてみせた。
果たして、千住明は、自分が「(平成版)鉄人28号」のサントラ作曲者であることを誇るだろうか?
ともかく、これで、日本に二人いる歌謡曲+アニメ関係の偉大な作曲家のひとりがいなくなってしまった。
残っているのは、ドラゴンクエストの作曲者、すぎやまコイチ氏だけだなぁ。
(画像はPS2用ソフトのもので、このトピックには関係はないが、画が気に入っているので挙げました)