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お節介な宇宙人 ~地球の静止する日~

「地球の静止する日」といえば、まあ、今ならキアヌ・リーブスのリメイクがすぐに思い浮かぶでしょう。

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 あるいは、今川監督のアニメ「ジャイアント・ロボ」が頭に浮かぶかも知れない。

 わたしが子供の頃は、和製2時間ドラマなど、まだ生まれておらず、夜の2時間テレビ枠を埋めていたのは、もっぱら「**ロードショー」という名の名画放送だった。(**には曜日が入るのですね。水曜ロードショーとか日曜洋画劇場とか)

 そして、それは同時に、映画の始まる前後に、作品について解説する映画評論家が、きちんとした社会的評価をうけるようになった頃でもあった。

 淀川長治、水野晴郎、荻昌弘や高島忠男もやってたなぁ。

 今も、ちょっとずつ映画放映はやってますが、なんだかリメイクの公開にあわせた広告がわりに旧作(オリジナル)をやるというパターンが多いように感じられて観る気がしません。

 もっとも、地デジの電波が強くなった影響か、我が家の地上波は、すごいノイズでうまく画像が映らないから観たくてもちゃんと見えないのですが……

 レンタルで観る映画と違って、コマーシャルが入るのも不愉快ですしね。

 NHKには昼と夜に、BS映画劇場という素晴らしい放送が残っていますが、とにかく、映画放送の絶対量が少なくなっている。

 放送が減ったのは、レンタルビデオやDVDで、気が向いた時にいつでも観ることができるようになったのが一番大きな理由でしょう。

 ケーブルテレビやスカイパー・フェクトTVといった専門チャンネルができたのも、地上波の映画放送を少なくした原因のひとつと思います。

 そういった専門放送チャンネルは、一回ぐらい観逃しても、何回も繰り返し再放送してくれるから安心です。

 逆にいえば緊張感が少なくなった

 そう、レンタルDVDが普及し専門チャンネルができ、映画放送が減ったおかげで、映画に対する緊張感を感じなくなったのです。

 公開中の映画のみ、公開終了からDVDが出るまでの間、観なおすことができないので、多少の緊張感が残っていますが……

 家庭にビデオさえ満足にない頃には、映画の放送などは一回コッキリ
 いい加減に観てしまったら、次に目にするのは運が良くて名画座のリバイバルだったのだから、コドモながらに根性いれて観たもんです。

 そんな時代に、良きにつけ悪しきにつけ、わたしに強い印象を残した映画が何本かあります。

 良い影響を与えてくれたのが「冒険者たち」に代表されるフランス映画です。

 「ピアニストを撃て」だとか「おかしなおかしな大冒険」(これは本当に好きな映画で、ある意味、わたしの人生を変えた映画でもあります)、あるいは「ミスタァ・ロバーツ」「12人の怒れる男」なども印象深かった。

 しかし、一番わたしに強い「影響」(悪い影響といってよい)を与えたのは、SFや怪奇モノの映画でした。

 今と違って、感受性の強いコドモ時代に観た映画のインパクトは強烈です。

 たとえば「禁断の惑星」。
 今では信じられない、あの裸のガンを持つ男、レスリー・ニールセンが二枚目船長を演じている50年代SFの金字塔です。

 この映画の「イドの怪物」は、何度もわたしの夢に出てきて、よくうなされました。

 元祖「蠅男の恐怖」も恐ろしかった。邦画では「妖星ゴラス」なんかも怖かったなぁ。

 さて、なぜ、こんなことを書き連ねたかといいますと、この項で書きたかった1951年版「地球が静止する日」は、それらインパクトの強かった映画と異なり、まったく何の後遺症もわたしに与えなかった映画だからです。

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DVD 地球の静止する日 【ベスト・ヒット・マックス】
 1951年制作。ウエストサイド・ストーリーの監督、ロバート・ワイズが撮ったモノクロ映画。

 当時、宇宙人を旧ソ連に見立てて敵視するというSF全盛だった頃に、宇宙人=冷静沈着で良い人、地球人=まず銃ぶっ放しの野蛮人という図式の映画を撮ったことは大したものです。

 モノクロ独特の質感のある映像、びっくりするくらい長身でスマートな宇宙人クラートゥの落ち着いた物腰、知的な会話もいい。

 彼の連れてきたロボット、ゴートが銀一色のズン銅スタイルで、ちょっとチャチいのはご愛敬でしょう

 クラートゥは、地球人に向かって、争いをやめるようにいいます。

 当然のように拒絶する地球側、というかアメリカ人

 彼は力を示すために、地球上の電力を止めます。

 これが、THE DAY THE EARTH STOOD ATILLです。

 何も地球の時点を止めたり、時間を止めるわけじゃないんですね。

 でも、おそらく被害は甚大です。

 病院では多くの患者が亡くなったことでしょう。

 だから米軍はクラートゥを射殺します。あばれるゴート。

 虫の息ながら、クラートゥは宇宙船を発進させ、宇宙に帰っていきます。

 いったい、何のために来たの?って感じもしますが、しっかりと地球人の愚かさは胸に届きます。

 インパクトは弱いですが、名作といって良いでしょう。

 さて、なぜ、今日、この映画について書いたかというと、先ほど立ち寄ったビデオレンタル店で、このモノクロ映画「地球が静止する日」のDVDがずらっと並んでいるのを見かけたからです。

 もうすぐ映画が公開されるとはいえ、これはすごい。

 でも、キアヌ・リーブスの作品の前哨戦、いやアペリティフとしてあれを借りたら、みんな怒るだろうな。

 しかし、「地球が静止する日」とは題名の付け方がうまい。ハリイ・ベイツの原作どおり「主人への告別」では、だれも観ないでしょう。
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地球の静止する日
1,000円

 今度のリメイクがどんな映画なのか、まったく知識はありませんが、アメリカ人が本能のままに映画化すれば、今度もお節介な介入者は殺害されるでしょう。

 (先住民からムリヤリ土地を奪いとったという)建国に多少のトラウマが残る彼らの方針は「俺たちは常に正しい。だから俺のアメリカンウェイに口を出すな」ですから。

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