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豪快な弥次喜多道中 ~素浪人 花山大吉~

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先月よりCS時代劇専門チャンネルにて、「素浪人 花山大吉」が始まりました。

 近衛十四郎演じる花山大吉は、子供の頃からわたしのヒーローでした。

 オリジナル小説を読んでいただいた方にはお分かりのように、ある事情から、推理モノを書かねばならなかったため、わたしの時代物は、どうしても岡っ引き中心になってしまっていますが、本当に書きたいもののひとつは、この「素浪人~」のように風任せに各地を放浪しつつ、行く先々で事件に巻き込まれるロードムービー時代劇なのです。

 もともとは、前作の「月影兵庫」の続編として作られた作品ですが、なぜか、わたしは、こちらの方が好きです。

 おそらく、回を重ねることで「予定調和」が練れて、ストーリー展開が、日本人にとって心地よいものになっていったからでしょう。

「月影兵庫」は、昔からある「マタタビもの」と、頭のキレる風来坊が主役の世界のクロサワ作「椿三十郎」あたりからテレビの制作サイドがインスパイアされ、ついでに弥次喜多道中のような凸凹(デコボコ)コンビの珍道中を描くようになってしまったあげく、原作者、南條範夫(あの「シグルイ」の原作者です)が、思い描いていた「渋い浪人の放浪話」という設定から逸脱しすぎたため、ついに作者からクレームがついて、放送終了になってしまったといいます。

 その設定をほぼ引き継いだ「花山大吉」は、最初から、そういった「作者の思惑」から解放されて、全開でコメディ時代劇道を疾走します。

 その結果、ホンペン(映画)からやってきたスタッフと芸達者な脇役をふんだんに用いて作られたこの作品は、最高にポップでキッチュ?な名作に仕上がりました。

 子供の頃は「どうしてオヤジにまったく似ていないのだろう?」と不思議に思っていた兄の松方弘樹や弟の目黒祐樹が、今みるとすごく近衛十四郎に似てきているのも嬉しい発見です(実のところ松方は、一時、花山大吉を演じたことがありますが)。

 いまだ健在(77歳)の、ハンサムな三枚目お人好しの旅ガラス「焼津の半次」を演じた品川隆二氏が、シリーズ放送を記念したインタビューに答えて、「コメディーの形で(近衛さんと)むき出しの闘争をしていた。NGは出した方が負け。その緊張感があったから続いたと思う」と語っておられますが、まさしくその通り、マンザイでもわかるように、二人の掛け合いで作られる、良いコメディは、抜き身の刀をつばぜり合いしつつ鎬(しのぎ)を削る真剣勝負です。

 森田 新の脚本も良い。

 オープニング・テーマを歌う、若き日の北島三郎の伸びのある高音もすばらしい。

 時代劇専門チャンネルを視聴できる方は、ぜひ、ご覧になってください。

 確かにレトロで、ステレオタイプで、パターンで予定調和的ではあるのもの、ある意味「完成された時代劇」がここには存在していますから。

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