THE SPIRIT(ザ・スピリット)、原作がコミックの2008年度作品です。
「シン・シティ」(好きです)、「300」のフランク・ミラーの映画です。
シン・シティ同様、大部分モノクロ+ところどころ深紅というスタイリッシュな映像がカッコイイ!
一度死んで生き返った主人公が、本当は死んでいるのか生きているのかわからない、というカンジの予告も魅力的。
THE SPIRITというからには、霊的なハナシなのだろうか?
結構佳作だった「ウオッチメン」と似たダークでレトロなカンジだけど、これも面白いカモ。
などと考えて、公開当時から観たいと思っていましたが、かなり短い時間で公開終了されてしまたので観に行くことができませんでした。
だから、さきの週末、レンタルビデオの棚の端に、このタイトルを見かけた時は嬉しかった。
早速、横にあった、N.ケイジの「ウイッカーマン」と同時に借りて帰ってみました。
その感想ですが……
確かに、映像は美しい。
オープニング直後から、シルエットを多用し、柔らかくシャープな黒(としかいえない)を基調とする映像に文句なく引きつけられます。
モノクロの映像でありながら、ネクタイだけが鮮やかな深紅というのも美麗です。
公式サイト http://wwws.warnerbros.co.jp/thespirit/main/index.html
しかし、ストーリーが、大雑把すぎて、どうもいけません。
やはり公開期間の長さは正直、というか、一般の方の観る目は確かです。レンタルビデオ店の棚の位置も正しい。
わたしのみるところ、スピリットというハナシには、いくつか欠点があるのです。
原作を知らないので断言はできませんが、アメリカのどこかの街(セントラル・シティ)を守る「街の守護者(ガーディアン)」というスピリットの立ち位置は、バットマンと80パーセント以上重なってしまいますし、一度殉職した警官が、墓場で生き返った後、どうして前の人生を捨て、スピリットとして生きていこうと決意するのかよくわかりません。
同じ「生き返ったヒーロー」なら、スポーンの方が魅力がある。
妻を守るために地獄から蘇ったのは良いけど、愛する妻はもう他の男と再婚していた(しかも親友と)のですから。
しかも、顔は焼けただれて、マスクを被らずにはいられない……なんてね。
とにかく、スピリットには、スポーンやバットマンのような苦悩や深みが足らない気がするのです。
女と見ればまずクドく「歩く生殖器」、女たらし過ぎるのもビミョーにひっかかりますし。
クドく?
そう、この映画の欠点は、クドいことです。
演出がクド過ぎる。
敵であるオクトパス(シャミュエル・L・ジャクソン)の舞台演出的な身振りも気になります。
スピリットとオクトパスの肉弾戦?も、スピリットが股間を殴られて目を白黒させてクドい。
天才科学者であるオクトパスが、ペトリ皿で生み出して部下にしている、太っちょでおバカなクローンたち(全員同じ顔)のリアクションもくどい。クドすぎる。
太っちょたちの名前(パトスやロゴスといった哲学的なもの)が、すべて彼らが着る黒のTシャツに印刷されているのも、面白さよりクドさを感じてしまいます。
つまり、映画が、シリアス路線を目指すのかスラップスティック(ドタバタ)を目指すのかがよくわからない。
中途半端なんですね。
残酷で身勝手で、ムチャクチャなオクトパスの言動が、S.L.ジャクソンの個人的魅力で、かなり愛嬌に感じられるのは、さすがですが。
ラストで明かされる、どうしてスピリットが不死身なのか、という種明かしも、「エ、そんなストレートな」という感じですし、オクトパスが探し求める宝が、「アルゴ探検隊が見つけたアレ」だったなんてのも、世界観と合ってないように思えるのですね。
おまけに、最後に利用されるアイテムが、これも「神話のアレ」だったなんて、ちょっと違和感感じまくり、という感じがします。
そんなのは、インディアナ・ジョーンズに任せておけば良いのです。
何度も書きますが、映像は美しいのですがねぇ。
結論をいいますと、「THE SPIRIT」、スタイリッシュな映像を見たいのなら、それほど尺も長くありませんし、ご覧になられても良いと思います。