かつて、NHKが、スペインの「アルハンブラ宮殿」の特集番組を作った時の事です。
ああ、アルハンブラ――なんと美しい響き!
その名を耳にするだけで、燦々たる太陽と甘い果実、そして美しい女性たち……なんてものが、わたしの単純な脳裏には浮かんでしまいますね。
しかし、NHKは、番組開始直後から「アルハンブラ」を「アランブラ」と呼び始めました。
ゴテイネイに、「NHKではこれまで『アルハンブラ』と呼ばれていた地名を、『よりセイカクな』発音である『アランブラ』に変えて呼称します、と、番組冒頭でアナウンサーにワザワザ言わせて!」
モノ知らずで、間違った発音をしている視聴者をケイモーしてやろうという、大NHKの意図は、まことに高尚(こうしょう)でしたが、滑稽なことに、そういった舌の根も乾かぬうちに、当のアナウンサー自身が「この『アルハンブラ宮殿は』」などと言い始めたのです。
それどころか、番組に呼ばれた『アランブラ』の専門家の学者サマまでが、平然と「アルハンブラ」と連呼し続ける始末。
結局、番組途中から、時たま、思いついたように「アランブラ」と呼んでいたのは、そのアナウンサーだけでした。
しかし、この放送協会の「モノ知らずに教えてやるぜコノヤロ」という態度はいったい何なのでしょうね。
だいたい、NHKが、ウイーンを正式なドイツ読み(Wien)ヴィーンで呼ぶところを聞いたことがない。
いや、ひょっとしたら、そのうち英語読みのVienna(ヴィエナ)と呼称しだすかもしれませんが。
あるいはフランス読みの Vienne(ヴィエンヌ)と。
要するに、ここでわたしのいいたいことは、その国で定着した発音なら、変にホントー(しかもNHKが、そうだと思いこんでいる)の発音に変えなくても良いではないか、ということです。
だいたい、いつのまにか日本中に広がった「技術者マガイ式カタカナヨミ」(メータ、データなどの、シロウトが使うエセ技術者風発音です)を、平気でアナウンサーに使わせるNHKが、今さら「正しい発音、表記」に、こだわる意味がわからない。
完全なダブルスタンダードです。
このブログを読んでいただいている方ならご存じでしょうが、わたしには嫌いなモノがふたつあります。
「変節漢」と「ダブルスタンダード」です。
NHKは、その両方を兼ね備えていますね。
と、ここまでが前フリです。いつもながら長い!
さて、当然、皆さんは、例の驚異のミラクル・オクトパス、ワールドカップの勝者を当てた、ドイツ・オーバーハウゼンの水族館シー・ライフで飼育されているマダコをご存じですね。
さて、あれの名前はなんでしょう?
パウルくんですね。
パウルってのは、ドイツでは良くある名前です。
日本の大輔とか翔ぐらいありふれた名前です(ほんとは太郎と書きたかった)。
そして、今や日本全国の人々が、なにがしかの興味をもって、パウルくんという名を知っている。
しかぁーし、NHKだけは、パオロと呼んでいるのですね。
NHKのサイトへいって、検索してみてください。
彼らは、妙に意地になって「パオロ」と呼び続けていますから。
でもね、もう日本全国、パウルで定着しちゃってるわけですよ。
それをいまさら、ムコーの発音近いのはこちら、正義は我にあり、ってな感じで、自分だけパオロっていってたら、いじめられますよ。
学校などの閉鎖されたコドモ社会ではね。
それが正しいか間違っているかはともかく、事実はそうです。
そんなとこで、バカで愚かな意地を張るんなら、アナウンサーたちが話す、変なカタカナ発音、メータ、データをやめさせろ!
彼らの好きなホントーの発音(ネイティブが文脈の中で使う時の)は、「メーター」「データー」なんですから。