かなり多くの人が、CGを全面に押し出した映像に拒絶反応を示した結果、同時期に始まったインディ4がロングランを続ける中、早々に打ち切られてしまった。
この作品については、観る前に一度書いていたと思うけど、実際に観た感想を以下に書いておきます。
物語終盤、グランプリ・レースで出遅れたスピード・レーサー(三船剛)が先行車をゴボウ抜きしていく場面で、アナウンサーが叫ぶ。
「素晴らしく速い。迷いの無い走りです」
そう、世間の評価はともかく、主人公同様、映画の制作者マトリックスのウォシャウスキー兄弟、そして監督のジョエル・シルバーの瞳にも全く迷いはなかったはずだ。
いかにもアニメ的な原色使用のド派手な背景処理も、顔の向きが変わるにつれて背景が変化するといった、アニメ的なショットの切り替え方、そして三船オヤジが頭の上で悪漢どもをクルクル回すと、ポケットに隠し持ったシュリケンが、次々と壁に刺さる演出まで、原作通りの世界観で統一している。
いくらオマージュったって、もうタツノコ作品をリスペクトしすぎ。
結論からいうと大好きな作品で、何度か観てしまいました。
ただ、惜しむらくは、レースの最高峰グランプリ、つまり最終レースを、いかにも未来的な立体鋼鉄コースにしてしまったことだ。
60年代、レースのことをよく知らなかった吉田竜夫たちが、憧れと勢いで作ってしまったアニメ作品「マッハGOGOGO」は、どう見たってオンロード使用のレースカーが、だだっ広いラリーコース(しかも、砂漠や洞窟などの極限コースばかり。不思議と雪コースはない)を、バリバリ違法なギミックを使用(ご存じのように、それらはステアリングポストにあるA-Gのボタンで起動する)しつつ駆け抜けるストーリーだった。
「スピード・レーサー」でも、物語の途中で「悪事を暴くため」ということで、ラリーに参加し、いかにもCGっぽい軽いジャンプを繰り返して優勝するシチュエーションはある。
だが、それで我らが2シーター仕様のマッハ5(日本じゃマッハ号だったのに向こうじゃマッハ・ファイブと呼んでいた)の出番はおわり。
最終グランプリには、スピード一家総出で、スーザン・サランドンママのアメリカではよくある、ママの愛情とコレステロール満載のジャムたっぷりパンケーキを食べながら、三十二時間で作り上げたシングルシート・タイプのマッハ6が出場する。
しかし、シングル・シートじゃミッチ(じゃない、ドングリ眼のクリスティーナ・リッチ演じるキュートなトリクシー:好きです)とのデートもできゃあしないし、クリ坊&サンペイ(なんか英語名忘れたな)が、トランクに隠れることもできないじゃないの。
やぱり現実的には、レースと言えばF1がメジャーであるから、未来においてもサーキット・コースが、最終グランプリコースになってしまうのだろうねぇ。
そこんとこ、ちょっと頭が堅かったかな。
本当に原作を敬愛するなら、最後もラリーでいってほしかった。
どうせ未来の話じゃないの。
積んでいるエンジンも、ベルヌーイ製のコンバーティネーターと称する、なにやら超伝導エンジン、つまり無煙電気エコエンジンみたいなんだから、レースのほうも、自然を駆け抜けるラリーが「キング オブ レース」になっていても不思議じゃないと思うんだがね。
ホント、なんかあのグランプリが気にいらんのよね。
ちゃちい鉄骨組み合わせたみたいなスケスケ・コース。
そりゃ最大斜度45度以上の下り坂とか、ぶつかったら一発オシャカのトゲトゲコースとか、魅力的な仕掛けはいろいろとはあるけれど、なんかねぇ。
今なお、おもちゃ屋で販売され続けている、数種類あるレース・トイ(ホイールではじき出されたレースカーがレール上を走り回り、最後は空中に飛び出して、再びコースに戻っていく:商品名:ホットウィール・スピードレーサー・マッハグランプリ・スカイジャンプ)を売らんがための、設定のような気さえしてくる。
まあ、その辺の事情は、日本の特撮モノとは違うと思うが……。
(恥ずかしいから、ちっちゃい声でいうが、なんかこのコース欲しくなったな。イイトシして情けないが。しかし買っちまうと邪魔になるだろうな)
前に書いたけど、ジョン・グッドマンって凄いねえ。
何をやってもアニメ顔そっくりになってしまう。
ベーブ・ルースも似ていたが、ヤバダバドゥーのフリントストーンもそっくりだった。
そして、今度はあろうことか、日本人の三船オヤジにそっくりになってしまったのだ。
たしかにタツノコの登場人物は、意味もなく純粋日本人の目が青かったりするが、あれはちょと異常なぐらい似ている(アゴの肉とかさ)。
ともかく、スピード・レーサー。
絵柄で毛嫌いせず、ぜひ一度観て欲しいものだ。