わたしが、その男を最後に観たのは、特撮テレビドラマだった。
牙狼-GARO-
別項でも書いたが、才人雨宮慶太監督の力作だ。
特に、デザイナー、イラストレーターでもある監督自身が書く変形文字は一見の価値がある。(現在も週間アスキーでイラスト文字「画柳の花」を連載中)
その第一回で、彼は、ヒロインに悪の呪いをかけて死ぬ魔獣役だった。
うなり、身もだえし、目をむき顔を歪めて変身するその姿は、かつて、友人が、邦画「トイレの花子さん」で岸田今日子が妖怪を演じた際にいった「仕事をえらべよ」という言葉を思い出させる怪演だった。
彼ほどのキャリアのある役者が(当時で60才を越えていたはずだ)する役でもないはずだが、なんとなく楽しげに演じているように見えたのが印象的だった。この点では、先日死んだ緒形拳に似ている。
その俳優 峰岸徹が死んだ。
彼に関しては、デビュー当時からの濃い顔と演技、そしてあのオカダユキコとの関係、など、書きたいことは色々あるが、出演映画について思い出すのは、なぜか、もう今や誰も知らず、再放送もないであろう、中井貴一主演の「F2グランプリ」(84年東宝:原作海老沢泰久)だ。
どういうわけか、わたしは、この映画を映画館でみている。おそらく、何かと併映されていたのだろうが、それが思い出せない。あるいはリバイバル上映だったのか……
その中で峰岸徹は、中井貴一のライバルレーサーとして登場する。
かなり汚いことをしてトップの座に座り続ける男なのだが、最後には中井貴一のマジメレーサーに破れてしまうという役だ。
この役も、彼は、独特の男臭い雰囲気で好演していた。
彼の死で、追悼番組が放送されるかどうかはわからない。
だが、もし放送されても、この作品が選ばれることはないだろう。
死因は肺ガンだったらしいが、昔の役者は、役どころで、よく煙草をふかしていた。
脚本家によると、煙草による間、というのが映画やテレビではずいぶん使い勝手があったのだという。
彼自身が、ヘヴィ・スモーカーだったのかどうかは知らないが、昭和の役者たちの中には、そういったことが原因で死期を早めるひとが多いのではないだろうか。
まあ、当時は誰でも煙草を吸っていたってなモンかもしれないが。
そういった後遺症が、後にトライアスロンに邁進する健康的な彼を襲ったのだろうか。
残念だ。
以上、長々と書き連ねてきたが、何が言いたかったかというと、とどのつまり、わたしは、このワイルドになった赤木圭一郎といった雰囲気の彼が嫌いではなかった、ということを記しておきたかったようだ。
いま、そう気がついた。
おそらく、今後、まだ訃報(ふほう)に接していない往年の役者たちも、次々と鬼籍(きせき)に入っていくことだろう。
だが、見た目の生命力の強さから、まさか死ぬとは思っていなかった役者が突然死ぬことには、少なからずショックがある。
まあ、そういっている自分もいずれは病気で、あるいは事故ですぐにでも鬼籍に入るかも知れないのだが。