かつて、ミステリ好きだった子供たちの間では、ルパンファン(三世じゃなくてホンモノ)か、ホームズファンかでグループが二分されたものだった。
前にも書いたが、わたしは、もと日本シャーロックホームズ協会会員なので、当然、ホームズ派だった……なんてことはまるでなく、ルパンとホームズのどちらも嫌いだった。
当時、わたしは江戸川乱歩の少年探偵団、ぼ、ぼ、ぼくらは~のアニメじゃなくて、ジュブナイル版の少年探偵団「青銅の魔神」などの大ファンだったのだ。
もちろん、当時から、乱歩がホームズとベーカー街イレギュラーズ(不正規連隊)を翻案して、少年探偵団を書いたのは知っていたが、昭和初期、あるいは戦後復興後の東京を舞台に、上流階級の世界で起こる事件がとても素敵に思えたのだ。
実際に、当時の日本では、ほとんどがバラックや合板の復興住宅、ひどい場合にはバスを住宅にしていたのに、少年探偵団に出てくるのは瀟洒な洋館と世界的に有名な博士、そしてその令嬢だったのだから。
そして、わたしは怪人二十面相のファンだった。
明智は、天然パーマで野口英世似のサエない奴だったし(挿絵が悪かった?)、しまいには、助手の女の子に手をつけるとんでもない男におもえたのだ。
その点、二十面相はスマートだった。
ミステリアスだった。
おそらく二十面相のモデルとなったであろうルパンは、フランス人らしく妙な気取り屋で、まったくミステリアスさを感じなかったし、ホームズは、なんだか頭の良いだけの「正義の人」で面白くなかった。
今、思うと、いくつか読んだジュブナイルがいけなかったのだなぁ。ホームズを、立派な探偵に描き過ぎていた。まあ、まさかコドモ向けの本でヤク中探偵に描くわけにもいかなかっただろうが。
高校になって、注釈付シャーロックホームズ全集を読んで初めて、ホームズが腺病(せんびょう)質の麻薬中毒者であることを知り、大ファンになったのだった。
それはともかく。
子供の頃のわたしの英雄は怪人二十面相だったのだ。
だから、実写版「少年探偵団」は大嫌いだった。二十面相がヘボ過ぎて。
いつか、わたしの手で、正しい怪人二十面相を復権させてやる、じっちゃんの名にかけてぇ(会社員だったけど)、と、思ったこともあったのだが……
先日、行きつけの映画館の前を通ると、下のようなポスターが目に入った。
なんだか、スパルタン?な20面相にちょっと気が惹かれた。
なんたって二十面相なんだし。
おまけに初代シルバー仮面に似てるじゃない。
愚かにも、わたしは実相寺監督がリメイクした「シルバー假面」(字が違うッショ)まで手に入れて、ガックシしたほどのシルバー仮面ファンなのだ。
調べてみると、江戸川乱歩の小説に登場する、怪人二十面相の真相に迫った、北村想の「怪人二十面相・伝」を原作とする「K-20 怪人二十面相・伝」が、上の映画とのことだ。
金城武や仲村トオル、松たかこといった出演者が名を連ねている。
制作者のコメントを読むと、彼ら団塊の世代がノスタルジーを感じるALWAYS時代(昭和二十年代後半~三十年代)を舞台に、ALWAYSのスタッフが作り出す冒険活劇とのこと。
怪人二十面相に間違えられたサーカス芸人金城武に、仲村トオル演じる名探偵明智小五郎がからんで、ひょっとしたら、おもしろいかも、という雰囲気の映画だ。
まあ、公式サイトでトレーラーでも見てください。
公開されたら、どうしようかなぁ?
金よりも時間よりも、ハズした映画を観ると、自分自身にハラが立つゥ(Gロボの中将長官風)ので迷うなぁ。
ちなみに、タイトルのK-9とは米国におけるK-9課(警察犬課)のことです。映画「K-9/友情に輝く星」(ジェームズ・ベルーシ主演)などで有名ですね。