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ブレる正義の視点 〜HEROES〜

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 もう、随分前から書こうと思っていたのですが、「スターゲイト」「Dr.House」「クローンウオーズ」、「HEROES1-3」など、個人的に残しておきたい海外テレビドラマの感想(評論でなく)が、どんどんたまってきたので、見切り発車ながら少しずつ書いていくことにします。

 まずは「HEROES」から。

 以前にどこかで書いたと思いますが、HEROESを最初に観ようと思ったのは、某放送局の「石(ノ)森章太郎特番」で、誰かが「今、流行っているHEROESも、とどのつまりは『サイボーグ009』に影響を受けて作られているわけですから」といっているのを聞いたからだった。

 その真偽はさておき、実際に観てみると、確かに、それぞれの能力者がそれぞれのチカラを使って、それぞれの思う『悪』と戦うという点では、似たところはあるが、どちらかといえば、HEROESは群像劇の色合いが強く、いかにもアメリカ的に、それぞれが自分勝手に動いているという印象がある。

 どうせなら、映画「ファンタスティック・フォー(かつてのアニメ邦題『宇宙忍者ゴームズ』)」あるいは「インクレディブルズ(オープニングタイトルは『Mr.インクレディブル』だが、エンディング・タイトルは家族で闘うためにこうなった)」のように、それぞれが、強大な敵と闘うために同時に能力を合わせたほうが、より009的であっただろう。

 確かに、1stシーズンのラストで、Gロボの「静かなる中将」のごとき人間核爆弾と化したピーターを抱いて空を飛ぶ兄のネイサン・ペトレリは、009を抱いて大気圏を落下しながら「どこに落ちたい」と尋ねた002そっくりだし、3rdシーズンで出てくる高速女は009の加速装置の魅力的な映像化だ。

 とはいえ、他者の超能力を模倣するピーターの能力はXメンのローグから着想を得たものだろうし、不死身のクレア・ベネットは、ウルヴァリンから生まれたのだろう。
 心を読み幻覚を見せることのできるマット・バークマンは、年代からいうとナルトの影響すら受けているかもしれない。

 さすがに、3rdシーズンで、今まで「能力」を嫌悪するかのように振る舞っていた「ただの人間」モヒンダー・スレシュ博士(彼はギルモア博士の立ち位置だと思っていた)が、突如超能力者になる物質を体内に打ち込んで暴力的になり、壁を上り、性欲まで強くなって、まるで、あのなつかしのブランドル・フライ(映画『ザ・フライ』)そっくりになってしまったのには、どう反応してよいかわからなかった。

 おまけに薬の過反応で、顔までブランドル・フェイス(フライが流行った時、キャンプで蚊に顔を刺されるとそういって友人たちと笑ったものだ)になったのには、唖然とさせられた。

 まさか、ヒロによって歴史が変わらず、時間線がこのままで、モヒンダーが死んだあと、恋人の超能力者マヤがハエの子供を産む、なんてオチはないでしょうねぇ。

 それじゃ「ザ・フライ」パクリ過ぎ!クローネンバーグに殺される。

 と、まあ、テレビシリーズに極端なオリジナリティを求めても仕方はないのでしょうが、途中で脚本家のストがあったとはいえHEROESの迷走ぶりには目を覆うものがあります。

 しかし、なんといっても、HEROESにおける、一番の問題は『奇をてらうあまり、主人公たちの性格を豹変させすぎる』ことです。

 物語を作る上で、心がけなければならないのは、一人の人物に一つのキャラクターにする、ことですが、HEROES(特に3rdシーズン)ではそれが守られていません。

 もちろん、二重人格という設定を使えば、この限りではありませんし、実際、HEROESでも、二重人格の怪力女性ニキが出ていました。(さすがに制作者も彼女の演技をうっとおしく思ったのか、2ndのラストでニキは殺されてしまいました)

 問題なのは、二重人格でもないのに、数年経つだけで性格が豹変することです。

 ヒロやピーターに時空を操らせるのは勝手ですが、彼が、タイムジャンプするたび、味方が敵に、敵が味方になるのは、視聴者の集中力を削ぐ効果以外にはないような気がするのです。

 視聴者、読者を驚かそうと思ったら、ラスト付近まで実直に作っておいて、最期に一気にひっくり返さないと効果はないのですから。

 この調子では、HEROESは、到底、長寿番組にはなり得ません。

 別項で書こうと思っている「SFテレビドラマ最長番組」としてギネス登録された「スターゲイト」では、洗脳などの正統な理由なく登場人物の人格は変わりません。

 だから、ファンは安心してドラマに埋没し、結局は、それが長い人気を生み出すのです。

 HEROESも「鬼面人を驚かす」といった体(てい)筋立てはやめて、もう少しストレートな話を組み立てた方が良いでしょう。

 老婆心ながら、そう思います。

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