スポーツなどのように、人々を興奮させるために、あらかじめその内部に組み込まれている「大逆転」はともかく、我々が、大逆転を実体験で目の当たりにする機会はそう多くない。
風の噂や著名人の自伝、テレビの特番で目にする程度だ。
しかし、「大」のつかない、「小」逆転なら、案外あちらこちらで見つかるものだ。
今日、わたしも(小)逆転を目撃した。
今夕、家事用ゴム手袋を求めて出かけたホームセンターでそれは起きた。
日常生活における小逆転は、レジ付近で起こることが多い。
平日のことで、いくつかあるレジの一つだけが稼動していた。
夕方になって、仕事帰りの人々が訪れ始めて、レジが混雑しだした。
すると、店員同士で、なにやら耳打ちが交わされたのち、隣のレジに店員が入って、
「並んでおられるお客さまどうぞー」
と、叫んだのだ。
さっと隣の列に移る人たち。
ああ、大、もとい小逆転の一瞬。
これまで列後方に並んでいた人が、突然、トップに躍り出たのだ。
だが、ここで留意しなければならないのは、逆転には二面があるという事だ。
すなわち、逆転する側とされる側と。
この場合、逆転されたのは、列の中ほどにいた人です。
それまで、結構並んで、やっと、もうすぐ自分の番と思ったら、自分の後ろの人が、隣のレジで一番になるのを目撃したのだから。
そして、自分は列の最後尾に……
その心中いかばかりか。
ツイてないとしか、いいようがない。
え、お前は、その一部始終を横で見ていたのかって?
もちろん、そんなヒマジンじゃないですよ。
じつは、その、列まん中に並んでいた善意の第三者が、わたしだったのです。