アニマックスで、最近、フルCGの「新キャプテンスカーレット」が始まった。
http://www.sonypictures.jp/tv/shows/captainscarlet/tvindex.html
放送データ
<スタッフ>
監督:デヴィッド・レーン
脚本:フィル・フォード
アートデザイン:ドミニク・ラヴェリー
共同製作:ゲーリー・ドノホー
編集:アンディ・ウォルター
製作:ハイパーマリオネーション
シリーズ創作&製作:ゲーリー・アンダーソン
音楽:クリスピン・メーレル
デザイン:マーク・ハリス
<キャスト>
スカーレット:落合弘治
ブルー:咲野俊介
デスティニー:落合るみ
オリジナル・データ、
英制作年:1967
日本放映:1968/1/2〜8/27
放映局 :TBS
物語 :火星の異星人ミステロンが地球人に復讐を開始した。偶然不死身の体となった
スカーレットは戦いを挑む。
サンダーバードの成功で大金を掴んだアンダーソン夫妻が、よりリアルな人形劇を作ろうとして、八頭身のカラクリ人形を制作、満を持して公開したのが「スーパーマリオネーション版」キャプテンスカーレットだった。(そして見事に失敗するあたりは、他の様々な分野でも繰り返されるパターンではある)
火星調査に出向いたスペクトロンのメンバー、キャプテン・ブラックが、異星人のカメラを武器と勘違いして、先に攻撃した結果、宇宙人ミステロンが、地球人殲滅計画を発動することになる。
この、「悪いのは人類」という設定は、神林長平の「戦闘妖精雪風」や「おわりなき戦い」、ウルトラセブンの「ノンマルトの使者」などでもおなじみだが、全体としてストーリーに陰影をつけすぎてしまうきらいがある。
で、そのストーリーの続き——
人類殲滅の手始めに、キャプテンブラックを洗脳し、悪のエージェントとして地球に送り込んだミステロンは、次いでスペクトロンのエース、スカーレットをも洗脳した。
が、大統領暗殺に失敗したスカーレットは、高層ビルから転落して死んでしまう。
のだが、ミステロンに「死なない体」に改造されていた彼は、即時蘇生し、洗脳も解けて、特殊能力を持ったエースとしてミステロンと戦い始めるのだ……というのが、オリジナルなんだが、どうも、このあたりが子供心に納得できなかった。
なぜスカーレットが死なないのか、わからなかったのだ。
はっきりとサイボーグだから、とでも言ってくれれば分かりやすいのだが、どうもそうではないらしいし(銃で撃たれると病院に入院したりする。で、来週完全復活!)、なぜ不死身なのかよくわからなかったのだ。
今回のオールCG版(ハイパー・ーマリオネーションと呼ぶらしい)のスカーレットは、ミステロンに素粒子レベルから人体構成を変えられながら遺伝子は同じ、という設定になっていて、「だから」不死身だということなのだ。
ナットク!……するわきゃないだろう!ますます分からない。
しかし、オリジナルでは、この「不死身」というシチュエーションを逆手にとって、だんだんとスタッフも遊ぶようになり、毎回スカーレットの違った「死に様」を我々に見せてくれるようになっていた。
ある時は蛇に噛まれ、砂に埋もれ、岩に押しつぶされ……。
ハリウッド映画に「八百万の死にざま」があるが、まさにそんな感じだ。
あるサイトでは、そのことを指して、こうした多彩な死にざまを毎回見せる、という流れは、時を下って、サウスパークのケニーへと結実した、と揶揄している。
前振りはともかく、現在まで観たところ、ストーリーこそ旧態依然ではあるが、マシンのデザインとコンセプトは、やはり素晴らしいのひと言に尽きる作品だった。
無線会話する時に、バイザーから一瞬で口の前まで降りてくるトーキング・マイクや、女性だけで構成されるエンジェル部隊(女性の方が加速度に対する耐性が高いためにこれは夢物語ではないとどこかで読んだ覚えがある)のスタイリッシュな制服や戦闘機、そして、24時間空中に浮かび続けるスペクトラムの空中要塞であるクラウドベースなど、未来はこうだぜ、といった強い信念を感じさせるギミック等は、余計な手を加えず、オリジナルの雰囲気を色濃く残したものとなっている。
もちろん、細かい改良は加えてある。
以前は、現存空母のように本数が少なかったベース上の滑走路が、関西新空港の滑走路増設のように、斜めに複数本敷かれていたり、甲板上の誘導を行うのが、地下で画面を見ながら体を動かす人間の動きを完全模倣するロボットであったりするのだ。
しかし、アンダーソン・ファンなら周知のことだろうけど、つくづくアンダーソン(特に妻のシルヴィアかなぁ)は、「宇宙で窓ガラスが割れ、真空になって人が死ぬ」ってシチュエーションが好きだなあ。
子供の頃、インパクトが強かったのは、「謎の円盤UFO」のムーンベースが、エイリアンの射撃で窓が割られて、友人が眼の前で窒息するシーンだった。
この「新スカーレット」もその例外でなく、キャプテン・スカーレットとキャプテン・ブラックの二人が、異常電波を発する火星に調査に赴く途中、微笑隕石が宇宙船を貫き、危うくスカーレットが死にそうになる。
それをブラックが命を張って助けるのだ。
三十有余年を経て、アンダーソンズ・ワールドで、初めて真空状態から主人公を救ったのが、後の宿敵だったというのも皮肉な設定で良い感じだ。
CGに関して言えば、造形は素晴らしいが、動きがどうも、フニャフニャしていて気持ちが悪い。
が、もともとが操り人形「スーパー・マリオネーション」なのだから、現在の発展途上フルCGで描くのは、かえって雰囲気が出て良いかもしれない。
場面転換の、ドラムに合わせて画面がフラッシュするのもオリジナルに忠実で好感が持てる。
機会があれば、ぜひ観て欲しい。