前年度までの選考でしたら、発想がありきたり、文章がなってない、人間が描けていない、など、なるほどと納得できる評価が、選考作品になされていたのですが、「火輪」については、文章か書ける人である(乃南氏)、人間も描けている(花村氏)と書かれているものの、森村氏の、私はこんな作品は嫌いだね、といった個人的な好悪が全てを押し流した感じをうけました。
もちろん、今読み返すと、至らない作品ではあります。
でも、他の作品との甲乙がわからなかったなぁ。
どこを反省して精進したら良いかもわからなかった。
まあ、人生はこんなものでしょう。
興味がおありでしたら、その時の選考のようす(紙面掲載時の)をアップします。
やはり、同じ「書き手」が選考するのは問題があるような気がしますね。
何年か前に、「半落ち」「クライマーズ・ハイ」の横山秀夫氏が、直木賞決別宣言をした気持ちが、なんとなくわかります。
とにかく直木賞をとりたくて、直木三十五の墓の横に墓地を買いつつ、ずっと三流エロ小説を書いていた胡桃沢耕史氏(「翔んでる警視」が有名)が、「黒パン俘虜記」で直木賞を受賞した時、選考委員のA氏は「あんなエロ作家を(自分と同じ)直木賞作家にするくらいなら、おれは委員をおりる」と、席を蹴って立っていったという話も聞こえています。
それはともかく……
応募した当時のままの梗概を載せておきます。
梗概:あらすじ
秋も深まった江戸、大川の河岸で娘、お芳の死体が見つかり、神田長兵衛長屋、通称からくり長屋に住む岡っ引き源七が捜査に乗り出した。
やがて、お芳は仏具の大店、京津屋の娘で、父親が火事から家を守ることで有名になった火除菩薩(ひよけぼさつ)の仏師であったが、五年前に行方知れずとなっている総五郎であることが知れた。
その頃、江戸市中には、付け火をして騒ぎを起こしてから、別の場所に押し込みに入る、蟷螂(かまきり)の居造を首領とする盗賊が跋扈していた。
やがて、
あ、これはいけません。
当時、梗概は、ミステリのネタバレまで含めて全部書け、と言われていたので、簡単に最後まで説明してしまっています。
ですから、梗概はここまでにしておきます。
興味のある方は、本編を以下からダウンロードしてください。
ちなみに、「からくり源七」には続編「魔毒」もあります。