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あけてはならぬパンドラの筺 映画 パンドラム

今回は、久しぶりに映画について書きます。

 11日以来、iphoneをフルに使って、twitter、Facebook、ツブエキ、ニコニコ動画、はては「はてなブックマーク」まで用いて災害情報を集める合間、めったに見ないitunesを何かの拍子にクリックすると、なぜか映画のページが開きました。

 興味のないまま、ざっとラインナップを見ましたが、案の定たいして魅力的なタイトルはなく、まあこんなモノだろうな、と閉じようとした時に、映画サムネイルに見た顔を見つけました。

 ミョーに小汚い髭ヅラになっていますが、確かに彼はかつての二枚目俳優、デニス・クエイドです。

 映画のタイトルは「パンドラム」

ファイル 607-1.jpg

 観たヒトのレビューを観ると、大作ではないけれど、適度にヒネリのあるスリラー系SFで、暇つぶしにiphoneの小さな画面で観るには手頃なB級っぷり、といった評価が並んでいます。

 値段を観ると、レンタル400円、購入2,000円。

 微妙に高い気がする。

 うーん、だったらレンタルDVDかブルーレイで観たほうがいいや、と、恒例の夜の散歩がてら最寄りの店で探すと、新作の棚に載っていました。

 まったく気がつきませんでしたが、劇場公開された作品(2010年10月1日公開)で、ライナーノーツを読むと、

「バイオハザード」シリーズのポール・W・S・アンダーソン製作、監督はウォルフガング・ペーターゼンで贈るSFスリラー。出演は「ライトスタッフ」のデニス・クエイド」

とあります。

 そうか、わたしにとって、デニス・クエイドっていうと、まず「第5惑星」なんだけどなぁ。最近?では「デイ・アフター・トゥモロー」かな?チョイ役なら「G.Iジョー」か。

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cf.ちょっとだけ「第5惑星」の説明を

ファイル 607-2.jpg

「第5惑星」(1985年)は、あの「インナースペース」(1987年)の前に彼が主演した映画で、傑作でも秀作でもないけれど、B級SF映画ファンにとっては、たまらなく奇妙でキッチュ(?)な作品でした。その内容は……

 21世紀末、地球はドラコ星と戦争を始めていた。
 地球人とドラコ星人、敵対する二つの種族のふたりが、戦闘のあげく第5惑星に不時着します。地球人をデニス・クエイドがやってます。
 やがて、二人の男(と思ったのに……)は、いがみあいながらも徐々に心を通わせ始める。第5惑星は、そうしなければ生き残れない過酷な惑星なのです。このあたり、トニー・カーチス、シドニー・ポワチエの「手錠のままの脱獄」っぽいところがあるなぁ。

 やがて、ドラコ星人が、ミョーに具合悪そうなそぶりをみせる。理由を聞いてもはっきりしない。
 やがて、ドラコ星人が雌雄同体で、彼/彼女が妊娠しており、出産が間近だということが判明します。
 って、普通、妊婦(あるいは妊夫)を兵士として戦場に行かせますかねぇ?

 まあいい。

 長くなるので、話をハショると、ドラコ星人は子供を出産し死亡(って、友情物語じゃないのか?いいのか殺して?)、クエイドは遺された子を守ろうとしますが、ドラコ人を奴隷にして働かせるモグリの鉱山経営者に子供を誘拐されて……

と、かなり紆余曲折のある、というか何がいいたいか分からない主眼のボケたプロットになっています。

 まぁ、このあたりが、B級SF映画ファンのスキ心をくすぐるのでしょうね。

 この映画に大きく影響を与えたといわれるのが、世界のクロサワの「太平洋の地獄」('68:三船敏郎、リー・マービン)です。第二次大戦中に、二人だけ生き残って無人島に流れ着いた日本兵とアメリカ兵、という設定は、「第5惑星」の前半部とまったく同じです。

 いかんいかん、ここで書きたいのは第5惑星じゃなかった。

 また長々と脱線してしまいました。アブナイアブナイ。

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という、変わった映画に造詣の深い!?デニス・クエイドが主演のサスペンス・ホラーSFなのですから、面白くないわけがない(どっち?)。

 実際に観てみると、このクラスにしては、映像的に、ほとんどB級っぽさを感じさせないナカナカの作品に仕上がっていました。わたしの大好きな「イベント・ホライゾン」あるいは「マウス・オブ・マッドネス」(どちらもサム・ニール主演だ)ほどではないにしても……

 ある若者が、巨大宇宙船の中、冷凍睡眠から眼を覚ますところから話は始まります。
 
 覚醒室には誰もいない。
 自動的にカプセルから放り出され、暗く冷たい床に転がりながら、彼は自分が誰かわからないことに恐怖します。

 この映画世界の設定として、

1.コールド・スリープ後、数時間~数日は記憶に混乱が起きる
2.過度の記憶錯乱によって、中には「パンドラム」という重度の精神障碍を起こす者がいる。パンドラムの外見的な特徴として手が震える。

ということがあります。

 若者も、覚醒時の記憶異常を起こしていて、自分が誰なのかよく分かってなかったのです。

 徐々に記憶が戻ってきますが、初めのうち、彼は自分が何者なのかも分かっていませんでした。

 ここで面白いのは、コールド・スリープ後の記憶錯乱を緩和するために、記憶を取り戻すきっかけ(文字、言葉?)を入れ墨にして身体に残していることです。このあたり、「メメント」に影響を受けているのかも知れませんね。

 パニックに襲われた若者は、上官の冬眠カプセルを開けて、指示を仰ごうとします。

 その上官こそがデニス・クエイドだったのです。

 無理矢理起こされたデニス・クエイドと若者。

 ふたりのまわりは謎で満ちあふれています。

1.なぜか彼らは冬眠室に閉じこめられている。

2.なぜ、彼らを起こすはずの乗組員が見あたらない。

3.さらに電気が満足に供給されず、どうやら船は制御不能であるらしい。

4.若者が苦労して部屋の外に出ると、カニバリズム(人肉を喰らう)を実践する不気味な怪物が遅いかかってくる。

 いったい船に何がおこったのか?

 なぜ乗組員がいないのか?

 あの怪物は何なのか?

 もちろん、映画のラストで、全てが明らかになります。

 その終わり方も、結構ツジツマがあっていて、悪くありません。

 ただ、映画を観た人の何人かが書いていたように、疑問なのは、

「**が**したことを**だけで、あんな状態になってしまうか」

ということです。

 伏せ字ばかりですみません。

 まだ新作扱いの映画ですのであまりはっきりと書かない方が良い、という大人の考えに走ってしまったからです。

 ちょっと怖いのは大丈夫、という人は、時間の余っている夜なんかに、レンタル店で借りて観るのもよいかと思