さきほど、録画しておいた今朝の新日曜美術館を視ると「歌川国芳傑作選」をやっていました。
しまった、先を越された!
知らなかったなぁ、今日、国芳を放送するなんて。
先週は「超写実画家 野田弘志」で、野田氏のスゴさに感動するうちに、次週予告を見なかったのです(野田氏については、検索してみてください)。
え? 先を越されるって?なに?
実は、先日、大阪市立美術館の「没後150年 歌川国芳展 」を観に行ってきたのです。
それについて書こうと思っているうちに、先にテレビ放映されてしまいました。
まあ、大NHKと争っても仕方がないのですが。
喜多川歌麿、安藤広重は有名ですから、わたしも何度かその作品を目にしたことがありますが、歌川国芳というと、鯉と戦う金太郎「坂田怪童丸」↓と、巨大な骸骨(個人的に、和田慎二氏が超少女明日香シリーズで描いた巨大骸骨の元ネタだと考えています)が宮中を襲う絵「相馬の古内裏」↓、あとは人で出来た顔「みかけハこハいがとんだいゝ人だ」ぐらいしか知りません。
「坂田怪童丸」
「相馬の古内裏」
国芳の人となりについては、おそらくデフォルメされているであろう、高橋克彦氏の小説で知るだけです。
今回、その作品の概要を知って、彼が、ユーモアとウイットと反骨心と進取の気性に富んだ人物であったことがわかりました。
メジャーになったのが三十歳を過ぎてから、という、浮世絵師としては弱冠遅咲きながら、日中の故事に因んだ英雄物語の挿絵、美人画、手に入れた蘭画の構図を貪欲に取り入れた作品を残しています。
まあ、面白くて粋だったら何でもいいじゃないか、という精神ですね。
この心持ちは清々しくていい。
挿絵としての「八犬伝之内芳流閣」は、屋根の頂上にいる犬塚信乃(しの)に、大勢の捕り手が襲いかかる図ですが、信乃に弾き飛ばされて、屋根の下まで流れ墜ちる(流閣)捕り方たちの様子が、躍動感あふれる筆致と構図で描かれています。↓
猫を使って文字を描く、なんてこともやっています。↓
なんと書いてあるかは分かりますね。
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英雄譚の酒呑童子モノでは、いま、まさに人から鬼に変わろうとしている童子が、パース無視の「魁男塾」大豪院邪鬼ふうの巨人として描かれています。↓
(あるいは、宮下あきら氏は、この絵にインスパイアされたかのか?)
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だまし絵もあります。
その名も「欠留人物更紗 十四人のからだにて三十五人にミゆる」↓
よく見てください(小さい画像ですが)。題名どおり、十四人にも三十五人にも見えるはずです。
あるいは、古来より英雄として有名だった朝比奈三郎を巨人として描いて、あたかもガリバー旅行記のような構図の絵を描いたこともあります↓。
日曜美術館では、この画を「天保の改革で娯楽を抑えられた腹いせに、娯楽の世界の英雄朝比奈に武士を見下ろさせた」のだと説明していました。
さらに、その巨大朝比奈の体を使い、人の体で顔面をつくったのが、冒頭で述べた「みかけハこハいがとんだいゝ人だ」なのです↓。
下の画で、赤く囲ったのが、もともとの朝比奈の頭だそうです。つまり、肩から下が朝比奈。
この遊び心は面白い。
あるいは、だまし絵に近い、影絵も描いています↓。
ちょっと意外だったのが、彼が大のネコ好きであったということです。
たくさんの猫関連作品を描いています。
なかでも、東海道五十三次を、猫五十三態で表した「其まゝ地口猫飼好五十三疋」↓がいい。
大阪美術館の展示では彼の猫の画をうまく使って、各展示室入り口で、国芳の画から切り抜き拡大した「巨大ネコカンバン」が出迎えてくれるようになっています。
さらに、順路にそって、ネコの足跡が「こちらですよ」と案内する趣向にもなっています。
大きく四つに分かれた会場内の分類もわかりやすく、展示の最後が、国芳65歳死去の折り、弟子歌川芳富によって描かれたとされる「国芳死絵」で締めているのも、余韻が残る良い演出でした。
「国芳死絵」は、粋な旅装に身をつつんだ、実際より少し若く二枚目に描かれ(イメージ的には大石内蔵助ふう)左手には「猫の根付」のついた煙草入れを持った国芳に、前年二十四歳で亡くなった弟子の一宝齋芳房が、荷物をもって寄り添って、さあ、次の旅にでかけようとしている絵です。
大阪の後、関東でも展示される予定ですが、関西にお住まいの方は、ぜひ、この機会にホンモノ(刷り物ですが)をご覧になってください。
平日なら、まだ空いていますよ。
また、本日、夜から、再放送の教育テレビ:新日曜美術館もご覧になってください。
大阪展 2011.4.11-6.5
静岡展 2011.7.9-8.21
東京展 2011.12.17-2012.2.12