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神というにはいささか弱々しい ~守護神~

 やや落ち目だった、ケビン・コスナーが心持ち復活した作品。

 内容は、われわれ日本人にはたった一言で足りる。

「米国版海猿」。

 時の流れは残酷だ。

 特に、その容姿で世をつかんだ者には。

 かつて「ボディーガード」で、世の妙齢のご婦人の魂をわしづかみにした二枚目も、すっかり顔に皺がきざまれ髪はうすくなり、中年になった。

 まこと月日は百代の過客にして、行かふ年も又旅人也……

 といった感慨は脇に置いて、ちょっと面白かったのは、米国であっても、海軍と海難救助隊には溝があり、レスキューが低く見られているのがわかることだ。

 海猿、その他で、ご存じの方も多いと思うが、日本でも海上自衛隊と海上保安庁は仲がよろしくない。

 その大きな理由が、ふたつの海猿集団が、成立母体がまったく異なる別なイキモノといって良い組織だからだ。

 現在の日本海軍である海上自衛隊は、警察予備隊から生まれた警察の姻戚であるのに対し、海上保安庁は日本海軍の血を色濃く引いた組織なのだ。

 一見すると、逆に見えるのが面白い。

 二つの組織のつばぜり合いを示す好例が、両組織に同じ名前の艦が多数存在することだ。

 まあ、ガキっぽいといえばガキっぽい話ではある。

どうせ死んじゃうのさ ~サンシャイン2057~

最近、映画を観ていなかったので、この連休を使って、ちょっと気になっているDVDを観た。

 順次簡単に感想を書いてみるが、まずは真田広之出演「

サンシャイン2057」

 公式サイト

 
「近未来」「太陽の異常を食い止める一団」といったコピーなどから、「アルマゲドン」や「コア」といった滅亡阻止モノと思って軽く見始めた。

 舞台となる宇宙船イカロスⅡは、映画冒頭からすでに宇宙を航行している。
 中盤、真田広之演じるカネダ船長が、あっさり事故死してしまうと、そこからは、イベントホライゾンばりにオカルト色が濃くなり、次々と殺人と事故が重なっていく。

 太陽近くで、七年前に消息を断ったイカロスⅠからの救難信号を受信するあたり、エイリアンや、ロスト イン スペースを彷彿させるが、乗り込んだ宇宙船で起きる出来事は、その二つの映画とは比べようもなく地味でツマラない。

 ちょっとキミ悪いだけだ。

 終盤になっても、イベントホライゾンのように別宇宙からやって来た怪物は出てこず、結局、事故と殺人は人間によるサボタージュ行為であることがわかる。

 幻滅したのは、最後に現れた犯人が、意外でも何でもない人物で、しかも、その姿をはっきりとカメラに写さないためか、上下左右にカメラをゆらしフィルターをかけ、何がなんだかわからなく撮影していることだ。

 まるで、同監督が撮った、かのマヤク映画「トレインスポッティング」ばりにラリっている、というか、こっちが酔ってくる映像だ。

 こういった(思いっきり好意的に考えて)カメラの軽量化による躍動的なカム撮りは、 ブレア・ウイッチ・プロジェクトあたりから顕著になってきたように思うが、はっきりいってこれは撮影側の自己満足でしかないと思う。(ブレア・ウイッチ・プロジェクトは低予算を逆手にとった、学生自身によるドキュメントという設定だったから、分からなくもないが……)

 なぜなら、われわれの眼は、三脚に据え付けられたカメラ同様、頭に据え付けられているが、生まれてからの経験と本能によって、たとえ四つんばいになったり、頭を振って思いっきりアクションしたとしても、同様に頭に据え付け?られている三半規管と、筋肉の伸び具合によるフィードバックで、適度に補正がかかり、キモチ悪さを最大限に防ぐことができるからだ。

 何のフィードバックもないカメラを振り回すのとは訳が違う。
 単に躍動感を出すためにカメラを振り回すのは、愚行以外の何者でもない。
 観客の気分を悪くするだけだ。

 まして、犯人をはっきり見せたくないためにカメラをブラすなんて言語道断だ。

 そういった撮影のキズも問題だが、本質的な問題は、映画のかなり最初のうちに、もう彼らが地球に帰還する可能性がなくなるのがわかることだ。

 イベント・ホライゾンや、ロスト イン スペースのように、残されたクルーに、起死回生の帰還法が残されていれば、彼らが生を願って必死にあらがう気持ちはわかるが、どうしても物理的に生き残れないことが早い時期にわかってしまっては、観ている側のハラハラ感も半減どころか256分の1減してしまう。

 なにがあっても、犯人に追いかけられても、どうせどっちも死ぬんだから、と考えてしまうのだ。

 まったく、自己満足も甚だしい。

 腹立たしい作品だ。

心優しき独裁者 〜秘密結社 鷹の爪〜

先日、蛙男商会の

   秘密結社鷹の爪
   THE MOVIE 〜総統は二度死ぬ〜

を観た。

 もともとは、短編が2006年にテレビ放映されたもののようだが、わたしは知らなかった。

 内容はというと、蛙男商会社長フロッグマンが、監督、作画、更には声優までも、ほとんど一人で手がけている紙芝居ライクなフラッシュアニメだ。

 短編が好評だったために、この劇場公開版が創られたのだが、フラッシュ紙芝居で劇場公開作品を創った(実際はもっと複雑なCGを使っているが)希有な作品ということになる……

 が、実際、作品を観てもらえればわかるが、劇場版が創られることもうなずける出来なのだ。

 特に短編が良い。一応、Youtubeへのリンクを、かぶらや本家サイトに貼ってあるので、消えないうちに観て欲しい。

 決して損はしないと思う。

 観てもらえればわかると思うが、「鷹の爪」の主人公(かな?)である「総統」(写真のアドルフ似の男)は、世界征服をたくらむ大悪人……ではなくて、心優しき常識人なのだ。

 だったら、なぜ、彼は世界征服などをたくらむのか、それは第11話「ファイナルアタック」を観てもらえれば分かるし、The Movieでは、世界征服を思い立ったきっかけのエピソードも語られる。

 劇中、悪であるはずの総統が「誇りある善人」なのに対し、正義であるべき超人デラックス・ファイター(この声が七変化のフロッグマンの地声にもっとも近いそうな)は、姑息でワルな俗物に描かれる。

 ぜひ、動画を観てほしい。笑って欲しい。そして、最後にちょっとだけ胸を熱くしてほしい。

 絵柄にだまされないように。

 これは名作です。

 そして、サイトにも書いたが、下から二番目にある、

「番外1 地球の未来へ贈ろう〜鷹の爪篇〜 」

を、ぜひ観て欲しい。

 わたしは、心優しい独裁者の声で語られる「地球温暖化(グリーンハウス・エフェクト)」への悔恨と決意を聴くたびに、恥ずかしくも胸が熱くなるのだ。

乞御一聴!

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